011119shizukuishis 雫石征太郎
自衛隊海外派遣について
アメリカ同時多発テロ事件もいよいよタリバン政権の崩壊により、終焉を迎えつつありますが、日本政府の対応は残念ながら迅速とは言いがたいものでした。なぜ湾岸戦争の時も今回の自衛隊派遣も小手先の対応しかできなかったのでしょうか。
今回のレポートはそのテーマで話を進めてみたいと思います。
次の文章は共同通信の記事を引用したものです。
政府は米中枢同時テロを受け、米軍の報復行動などを支援する七項目の措置の具体化を急いでいる。このうち自衛隊の活用を盛り込んだ(1)医療、物資輸送などの支援(2)自衛隊艦艇の派遣(3)避難民支援(4)米軍関連施設の警備―の四項目について、今後の課題と見通しを探った。
【米軍等支援新法】
政府は、自衛隊が医療、物資輸送などを支援する新法を十月五日に国会提出する方針。新法は日米首脳会談で小泉純一郎首相が実現を約束し「対米公約」となっている。政府、与党は新法について(1)テロ対策に限った特別立法(2)活動地域は「戦闘が行われていない」などを条件に他国領域も含む(3)支援は医療、輸送、補給など周辺事態法に規定された項目と被災民支援―とすることなどで合意した。
今後、派遣隊員の武器使用基準の緩和が最大の焦点となるが、憲法で禁じた海外での「武力行使」に当たる可能性もあり、調整は難航する見通しだ。
政府、与党は民主党の協力を得るため、武器・弾薬輸送の除外や自衛隊の活動地域の歯止めなどで民主党の主張を受け入れることも模索している。
【自衛隊艦艇派遣】
防衛庁は「日本の商船の安全航行を確保するための情報収集」を目的に、インド洋に最新鋭のイージス艦を派遣したい考え。しかし法的根拠を防衛庁設置法の「調査、研究」に置いていることから、拡大解釈との批判が強い。与党内には「日の丸を掲げるためのみの派遣」(自民党筋)との反発が広がっており、イージス艦派遣は当面、先送りされる方向。イージス艦以外の護衛艦派遣を検討している。
【避難民支援】
政府は九月二十九日に調査団をパキスタンに派遣。早ければ十月上旬に航空自衛隊のC130輸送機四―五機からなる空輸部隊を編成し、毛布、テントなど救援物資をパキスタンに輸送する。
現行の国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく派遣で、与党調整なども特に問題はなさそう。ただ現行法では、米軍の報復行動でパキスタンが紛争に巻き込まれれば、同法の派遣条件が崩れ、活動中止に追い込まれる。
このため、難民支援活動を新法にも盛り込む方向。ただ「武装した難民」への警戒などから、ここでも自衛隊員の武器使用基準の緩和が問題となる。
【米軍などの施設警備】
政府、与党は今回のテロを教訓に、自衛隊が国内の重要施設警備を実施できるように自衛隊法を改正する方針。これまでの調整で「自衛隊が国会や皇居を警備しなければならない事態になれば治安出動だ」(政府首脳)との判断で、警備対象から皇居、国会、首相官邸などを除外し、米軍と自衛隊施設に限定することになった。
http://www.kyodo.co.jp/kyodonews/2001/sdf/news/20011001-10.html
以上がおもな日本政府の対応でありますが、個人的な感想として、対応が遅かったわりには結局自衛隊にさまざまな足かせをして十分な行動ができなくしてしまっているような印象を受けました。
勿論日本が本来軍隊を持たない憲法をもった国であることをふまえて書いているわけですが、その議論は湾岸時に解決しておくべきだったのではないでしょうか。結局最新鋭のイージス艦出航も「日本の商船の安全航行を確保するための情報収集」が目的であり、「日の丸を掲げるためのみの派遣」(自民党筋)であるとの考えもうなずけます。自己保身のためだけの派遣ならばアメリカ側から見ても、日本の行動は茶番にすぎないとみられても当然でしょう。今になってどこからどこまでが後方支援だとか、どこまで自衛隊の武器使用を許すだとかを一から決めていれば後手後手になるのも当然ではないでしょうか。今回の事件はいわゆる周辺事態ではありませんでしたが、現代の戦争はどこまでが周辺かという定義もしづらくなってきています。世界に誇れる平和憲法も国民の生命と財産を保全できなければ、絵に描いた餅にすぎません。
アメリカに守られているからといって自衛隊が形骸化していては、有事の際に迅速に行動できる道理がありません。勿論政治家や自衛隊だけに押し付けるのではなく私たち国民も危機感を持って憲法と自衛隊のジレンマを解決していく必要があると考えます。